音楽的主張– category –
-
トリエンナーレ2024
今回は少しクレモナのレポートをしっかり書いてみようと思います。 最初はトリエンナーレです。ことしは3年に1回のトリエンナーレの年でした。 Triennaleとはイタリア語で「3年に一度」という意味です。英語だとtrienrial。2年に1度だとbiennaleです。もともとは美術博覧会を指したようですが、クレモナでは現在は3年に一度制作コンクールが行われているので「トリエンナーレ」が固有名詞のように使われています。 表彰式はポンキエッリ劇場で行わわれます。今回はボックス席でした。 トリエンナーレのシステム... -
「ザッツ」ってなんだ???
最近、あるアマチュアオーケストラのコンサートマスターからこんな話を聞きました。 「指揮者に、もっとザッツを出せ、と言われる。他のパートが出るのを間違えるのは、コンサートマスターがきちんと動いてみせないからだ、と言われたけど、コンサートマスターって、そんなにザッツを出すものなの?」 うーん、とうなってしまいました。アマチュア・プレーヤーならともかく、指揮者がそういうことを言うとは・・・ こういった勘違いは、アマチュアのベテラン奏者に多く見られます。「トップの仕事はザッツ... -
ガーリックとヴィブラート
料理好き、食べ物好きである。あちこちに書いているので、私が書いているものを読んで下さっている方は、よくご存知だろうと思う。 昔、トマトソースを作る時に、ベーコンや玉葱を入れていた。オリーブオイルに、ニンニク、玉葱を入れてよく炒め、ベーコンを入れてトマトを入れて煮込む。これはこれで「まずくはない」のだが、それほど積極的に作ろうと思わせるようなものではなかった。それがある日、ガーリックオイルを作る方法を学んで、トマトソースの作り方が全くかわってしまった。それ以来、大好き... -
表現することは準備すること
久しぶりに、音楽日記を更新します。 震災以来、公私ともにさまざまなことがあり、なかなかブログを更新する気になれませんでした。その間に、私を取り巻く環境も少し変化しました。これからは、短くても少しずつ更新しようと思います。(仕事の合間の休息、または「逃避」かもしれませんが/笑) 今日のテーマは「表現することは準備すること」 発表会(今年は残念ながら中止になってしまいましたが)やアンサンブル合宿をやっていると、生徒たちが少しずつ成長していることがよくわかります。最初は楽譜を追いか... -
津留崎さん帰国
30年以上に渡ってフランスで活躍してきたチェリストの津留崎直紀さんが、在籍するリヨン国立歌劇場管弦楽団を休団されて帰国されました。11月から12月にかけて、6回のリサイタルを開催されます。とにかく意欲的なプログラムで、短期間にこれだけの曲を弾かれることにびっくり。素晴らしいコンサートになることを、楽しみにしています。 その津留崎さんと、CONSONOのハイドンについてスタジオで1時間ほど打ち合わせをし、その後、近くのイタリアンで食事をご一緒させていただきました。とてももりあがり、楽しい... -
音楽業界の厳しさ
音楽業界、特に、音楽に関わる出版の不況が深刻です。金融不安、東日本大震災、欧州の金融危機など、経済状況が悪いのは音楽に限ったことではありませんが、それでも、ここ1年ほどの状況は目を覆うばかりです。 音楽之友社で、会社側と従業員の間で、退職金に関して裁判沙汰になっていることは、ご存知の方も多いと思います。音楽之友社にはそれなりの特殊事情もあるようですが、それにしても、どうあがいても勝てそうにない裁判に持ち込まざるを得ない音楽之友社の状況は、容易に想像がつきます。 ネットの普及... -
飲み屋でアンサンブルの極意を見た
最近、名古屋で行きつけの店ができました。隔週の名古屋のレッスンは、金曜の午後/夜と土曜日です。土曜日は名古屋の生徒と食事をするのが恒例なのですが、問題は金曜日。ひとりで食事ができる(飲める、とも言う)安くてよい店はなかなかありません。金曜日に泊まり始めた当初は、ホテルのそばに王将やマックしかなく、ホテルで寂しくビール、ということもありましたが、昨年の暮れに名古屋の生徒が見つけてくれたお店(一位/http://r.tabelog.com/aichi/A2301/A230102/23000898/)がとっても気に入ってしまい... -
ピアノを調律しました
一昨日、半年ぶりに調律をしました。今回は、ちょっと新しい調律師さんにお願いしてみました。うるさいことを言ってごめんなさい・・・ 私のスタジオのピアノは、キルンベルガーの第3に調律してあります。理由は、調性の「色」が見えるようにする(生徒に知ってもらう)ためです。ですから、調律師も限られてしまいます。 ピアノを古典調律にしようと思ったのは、10年ほど前に、作曲家・ヴァイオリニストであった故玉木宏樹さんの事務所にお邪魔したことがきっかけでした。チェンバロの調律は20年前からやってい... -
難しい問題ですね…もちろん文化予算削減には反対なんですが…
数日前に、何通かのメールをいただきました。内容はどれも同じで、民主党政権による事業仕分けで音楽関係の予算が削減されようとしていることに対する反対のメールを送って欲しい、というものです。小澤征爾氏が民主党の小沢幹事長と会談したことが「Wオザワ会談」として報道されましたので、ごらんになった方も多いでしょう。 事業仕分けの対象となって、廃止・削減の対象となっているのは、「芸術創造活動特別推進事業助成金」「プロ・オーケストラによる本物の舞台芸術体験事業」、いずれも文化庁の事業です。 ... -
音感について・・・絶対音感は邪魔になる!
最近、いわゆる絶対音感について改めて「邪魔になる」例が二つでてきたので、ご報告します。 音感とは何か、ということは、サイトでもストリング誌やサラサーテ誌にも何度も書いていますので、簡単に。詳しく読みたい方は、サイト内を検索していただければいくつかヒットします。これが簡単にまとまっているものです。 音感とは、本来は音の性質(高さ、大きさ、種類など)を理解できる力ですが、一般的には「音の高さを判断する」意味で使われています。今回のレポートは、この「音の高さ」についてです。 ... -
飲食店と音楽家
ここのところ、飲食店と音楽家の同質性について考えさせられています。 異論はたくさんあるでしょうが、思っていることを書いてみようと思います。 これまで要請を厳密に守ってきた多くの飲食店の中に、やむに止まれず酒類の提供を始めたところがあることは盛んに報道されていますのでご存知だと思います。私の知っている(良く行っている/行っていた)飲食店の中でも、今回の延長を期に形はいろいろありますが「要請に厳密には従わない」ことを決めたところがいくつかあります。パターンはいくつかに分かれます... -
音が音楽になる時・・・講習会を行いました
8月28日に、スタジオで第32回音楽理論講座「音が音楽になるとき・・・第1回 総論」を行いました。参加者は19名。14時から19時の長丁場でしたが、まだ話し足りない・・・相変わらず、時間の使い方がうまくありません。ピアニストの筒井一貴さんに手伝っていただき、当初の内容を少し変更して行いました。 音楽的とは何か、を理解していただくために、実際の演奏をたくさん聴いていただきました 今回の講座は、下記の3回の講座を含めた4回シリーズの一環です。 第33回音楽理論講座「音が音楽になるとき2・... -
クレモナ・ワークショップとコンサートのご報告・・・1・・はじめに
9月20日から22日までの3日間、クレモナの第10展示室で、「Set-up:CHE SUONO RICERCANO I MUSICISTI?」と題するワークショップを行いました。ワークショップの内容を簡単にまとめると、「演奏家が求める楽器とはどのようなものか。セットアップを変化させることで楽器の可能性をさぐり、演奏家が求める楽器を生み出すための提言を行う」というものです。 私のようなものが、クレモナの楽器職人を相手にこのようなワークショップでファシリテーターを務めるなどという大それた真似を、と、当初は自分でも... -
ワークショップ前夜
私がクレモナに到着したのは9月17日の夕方です。ワークショップで何をやるか、どんなものを配布するか、どのような時間 今回のヴァイオリン博物館「ストラディヴァリフェスティバル」の目玉は、300年ぶりにクレモナに戻った「メシア」 割にするかなどの進行については、あらかじめ大まかに決めてあったのですが、大きな問題は、日本語をイタリア語化してどのように伝えるか、ということでした。日本側(私、津留崎さん、茂木さん)が話すことをどのようにイタリア語にするのかという純粋に言語的な問題も... -
多喜先生のこと
ピアニストで名教師であった多喜(宇野)靖美先生が亡くなられました。私より数歳上という若さで・・・あまりに早い、と無念で仕方ありません。多喜先生は私にとって精神的な支柱でもありました。心よりご冥福をお祈りするとともに、自分の頭を整理するためにも、多喜先生のことを少し書いてみようと思います。 多喜さん(この後、多喜さんと書かせていただきます)と初めてお会いしたのは、今から40年近く前のことです。当時アンサンブルを組んでいた桐朋卒のピアニストが多喜さんと桐朋の同級生で、そのご縁... -
AIとヴァイオリン
高校の同期会で、日本のAIの第一人者である松原仁函館未来大学教授と少しお話をすることができました。普段から活躍ぶりをFacebookや報道などで見ていたのですが、私もとても興味がある分野で、話ができることをとても楽しみにしていました。宴席でのことですから、もちろん真面目な議論(議論なんかできるわけないですね/笑)ではありませんが、少しばかり興味深いことがありました。 AIが日本(だけでなく海外でも)で大注目されるようになったきっかけは、昨年、グーグルが開発している人工知能が韓国のト... -
私が新作楽器を否定しなくなった理由
私は長い間、新作楽器を半ば否定していました。値段が安いものはともかく、ある程度以上の値段を出すのに新作を買うのは良くないと思っていたからです。理由はたくさんありましたが、主に5点です。 ① 楽器の音はどんどん変化する。新作楽器はどのように変化するかがわからないので博打になってしまう危険性がある。時間が経った楽器はその中で残ったものだから安心である② 楽器は乾燥が進むと反応が速くなる。新作楽器はどのように弾いてもある程度以上時間が経った楽器に反応速度では負けてしまう③ 作られ... -
カリグラフィーと音楽〜〜模倣とイメージ
カリグラフィーにハマっている生徒がいます。綺麗に書かれた文字は、それだけで芸術作品とも言えるほど美しいものです。中世の楽譜では盛んに使われていました(画像はこちら)。この生徒も、古い音楽が好きなので最初は楽譜の文字に憧れたのかもしれません。 そんな生徒が、インスタグラムに「お手本」と「自分のもの」の写真を載せていました。まだ始めたばかりなので試行錯誤の連続だということですが、それを見てふと思いました。「この違いはなんなんだろう」左がお手本、右が生徒のものです。「G... -
2013年を迎えて/今年を大きな進化の年とするために
2013年になりました。時が経つのは速いもので、ミレニアムからすでに干支が一回りしてしまいました。昨年も、多くの方々に助けられて、無事に1年間、仕事を続けることができました。私を支えてくださったすべての方に、この場をお借りしてお礼を申し上げます。今年も、昨年より一層よい仕事ができるようにがんばりたいと思っています。変わらぬご厚情のほど、よろしくお願いいたします。 思えば、リーマンショック、東日本大震災と、音楽業界にとっては「超逆風」が続きました。音楽之友社の経営難、レッスンの友... -
体罰について思う/スポーツ界だけの問題だけではない・・・指導者の想像力の欠如
体罰を受けた生徒が自殺し、ニュースワイドショーなどでは「体罰反対」の報道が溢れています。体罰容認派として有名だった橋下大阪市長まで「考えが甘かった」と、体罰反対の姿勢を明らかにしています。(「脱原発」もあっさり放り出した橋下市長です。今回の「体罰反対」も世論を気にした人気取りの思いつきでしょうから、そのうち「撤回」するのじゃないかと思いますが。)今回の報道を見ていて愕然としたのは、「負けると殴られる。失敗すると殴られる」という生徒の証言でした。負けたことを、自分の指導が悪... -
玉木さんとの出会い
先日、ストリング誌の企画として、純正律研究所の玉木さんとお会いした。大変興味深い一日で、たくさんのことを考えさせられた。「対談」と称する記事になるのだろうが、もちろん大方私の方が聞き役。玉木氏が長年に渡って研究されてきた成果を教えていただく、というのが本当のところだ。 実は、玉木さんのウェブサイトは以前から知っていた。僕自身、音律のことに興味があったこともあって、あれこれと検索していたらひっかかったのだ。内容を読んでかなりのけぞったものもあるが、いろいろと勉強させられたこと...
1