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第1回レクチャーコンサートについて掲示板から抜粋(2)
私の掲示板の回答(1)を受けて返信してくださったものに対しての回答です。(笑) ======================= 読み応えのある再質問、ありがとうございます(笑) > 目に見えない要素(今回のお話の音程や、曲作りそのもの) > については、まだまだ私にとっては‘謎’がいっぱいなので > すが、こうやってヒントをいただくと楽しみが広がります。 何かにこだわると、こだわったことが全てを支配するように思いがちなのですが(これは、自戒を込めて)、音律や音程は「謎」のひとつでし... -
若者の体
この半年で、若い生徒さんが増えました。はっきり算出したことはないのですが、半年前は、恐らく平均年齢が40弱くらいではなかったかと思います。それが、10代、20代の生徒さんが6人も増えて、ぐっと若返ったような感じです。ところが・・若い人たちの体の状態が大変良くないのです。 まず、筋肉をきちんと使えない人がほとんど。特に、腹筋や骨盤まわりの筋肉、肩甲骨を運動させる筋肉など、体の維持に大切な筋肉がまともに使えない人が多いのです。また、腰回りの骨格が安定していない人も多いですね。骨盤の形... -
アシスタント制
「ヴァイオリン教師の資質」のところに、「レッスンが必ず先生本人で一対一で行われていることが必要」と書いたのは、もう5年以上前のことです。そんなことを書いた本人が、アシスタント制を使うようになるとは、思ってもいませんでした。 私が「先生が必ず本人で」と書いた理由は、高校生の時に自分が先生の代稽古をさせられた体験の反省からでした。教えることはそんなに簡単なことではなく、弟子が簡単に先生の代わりをすることなど許されないと考えたからです。また、友人の大手ヴァイオリン教室の先生が、「... -
空間認識能力と脱力の問題
お弟子さんの中に、非常に「体が硬い」人がいます(Aさん、としておきましょう)。私がレッスンを見るようになって一年半になり、体の使い方は当初とは大きく違ってきたものの、どうしても「硬さ」が抜けきりません。レッスンのたびに体の使い方についての議論になり、私自身にとっても勉強になることが多いのですが、新しいテーマが出てくるたびに同じような問題に突き当たるのでした。それが今日、根本的な原因が判明したのです。非常に珍しいケースなので、私にとっても新しいファイルができました。さて、こ... -
レッスン料の払い方と口のきき方?…先生と生徒のやりとり、ひとつ、ふたつ
以前サラサーテに、「先生にレッスン料を尋ねることができるか?」ということを書いたことがある。私としては、レッスン料を尋ねられることは当然だと思っているし、抵抗はない。しかし音楽の世界では、レッスン料を尋ねることが失礼だと考えられてきたし、今でもその意識は根強い。このことについては今回は書かないが、最近の私と生徒のやりとりから、先生と生徒の関係を考えてみたい。 まず、非常に外形的なことから取り上げてみよう。一つは「レッスン料の払い方」である。 「そんなの、決まってるじゃん、封... -
ヴァイオリン教授法の必要性
ある人がこんなことを言っていたのを聞いたことがある。ちょっと過激な意見なのだが、顔をしかめないで聞いて欲しい。 「音大生って、毎日ヴァイオリンばっかり何時間も練習しているのに、どうしてそんなに上手くならない人がいるんだろう?」 この意見の真意は、「練習方法を考えれば、もっと伸びる可能性がある人が多いのではないか。多くの人が練習方法を間違っているのではないか」というところにある。練習している当人に「あまり上達しない」原因を求めているのだ。 これを聞いて、私は「教える側の問題も大... -
レクチャーコンサートの感想と思うこと2
私がレクチャーコンサートを企画して続けていきたいと考えている最大の理由は、多くの作曲家が遺した作品が「コンテンポラリーである」ことを示したい/感じていただきたい、と思っていることです(このことは、実は書くつもりはありませんでした。しかし、何人かの生徒に鋭い質問をされ(苦笑)白状せざるを得なくなってしまったので、公平を期するために書いてしまうことにします)。何回かレクチャーコンサートを聞いていただくと「あ、また言ってる」という具合に感じていただけると思っていたので、敢えてお... -
先生は偉いか???
私は「先生」と呼ばれることが好きではない。子どもたちを「教えて」いたころから、極力「先生」とは呼ばないようにお願いしてきた。理由は・・・とにかく嫌だったんだろうと思う。 こんなことを仕事にしていると、初めての人たちはどうしても「先生」と呼ぶものだとおもっていらっしゃるようだ。それがもちろん、礼儀として正しいことなのだろう。だが、一つだけどうしても気にくわないことがある。「先生と呼ばれる人が言ったことは、呼ばれない人が言ったこととは価値が違う」という意識がバシバシ感じられるこ... -
オーケストラ演奏会本番でのエピソード
私が体験したことや聞いた面白い話など、演奏会本番での出来事をあげてみました。 [目次] (1)飛び出しの話 (2)シンバルは楽譜を吹き飛ばす (3)演奏旅行はエピソードの宝庫 (4)寝過ごし防止は漫画はだめよ (5)消える指揮者の謎 (6)ダンディな指揮者 (7)同じと思うな気をつけろ (8)持ち替えエキストラ (9)指揮者とオケの壮絶なる戦い(^ ^;; (10)ピットの中は無法地帯? (11)シャンデリアががっしゃーん (12)禁断のガイド (1)飛び出しの話 まずは、自分の恥ずか... -
銘器の力
先日(といってもずいぶん前だが)、あるところでストラディヴァリを弾く機会があった。そこでちょっと凄い体験をしたので書いてみたい。 今まで、ストラディやグゥァルネリを弾いたことは三度ほどある。いずれも10年以上も前のことだが、はっきりいって「衝撃を受けた」という経験ではなかった。凄い楽器だということはわかるのだが、はたしてウン億円の価値があるのかどうかと疑問をもったものだ。その内の二台はオークション(サザビーだったかクリスティーだったか忘れた)にかけられている楽器のお披露目で、... -
チェンバロとバロックの演奏について
今年も、発表会でチェンバロとのアンサンブルをやります。とても「贅沢な」ことなのですが、昨年やってみて、楽しいだけでなくさまざまなことを考えさせられたことが、再びやってみたくなった理由です。 ヴァイオリンの音を作る大切な要素に、音の立ち上がりと弓のスピードがあります。私は通常、ボウイングのトレーニングを、子音を付けた音が基本になるように教えています。子音のあるなしは、音の立ち上がりの明確なさになって現れるからです。子音がない音は、立ち上がりが鈍く、ホールで通らない音になりやす... -
左利きの矯正が原因? 指の腱に新たな問題
ある生徒さんのレッスンでのことです。仮に、Cさんとしておきます。 Cさんは、私が書いたサラサーテの記事(The 親指)を読んでから、左手中指と薬指の中間がまっすぐになるように努力をしていました。今日のレッスンで、「左手に違和感がある」と言われ、症状をチェックしていてまた新しい問題が出てきました。右手は、中指と薬指の中間がまっすぐになるようにした方が指の運動が楽なのですが、左手は、親指と人差し指の腱がまっすぐな状態が「楽だ」と感じるのです。さて、困りました。「常識に反している」の... -
音程を合わせること…耳の働きと無意識の調整
何人かの例があったのですが、最近、あるベテランの生徒さんのレッスンでふたたびこの現象を目にしたので、忘れないうちに書いておきます。 一緒に弾いていると、自分の音を私の音より少し高めに取ろうとしてしまうことで、この症状が判明します。特に、オーケストラばかりで弾いていると起こりやすいのですが、自分の音が聞こえないと不安になる心理状態から発生することだと考えられます。二人の音が完全に一致すると、まるで音が溶けたような状態になります。すると、自分の音が独立して聞こえなくなります。そ... -
第1回レクチャーコンサートについて掲示板から抜粋(1)
第1回レクチャーコンサートの感想と思うことに対して掲示板に書き込みがありました。なかなか面白いやりとりでしたので、その時の私の回答を載せておきます。 =============================== 鋭い質問、ありがとうございます(笑)回答は順序がバラバラになりますがご容赦ください。 《ノリントンの考え方やピリオド奏法についての多少の感想》 ノリントンは、練習のヴィデオやベートーヴェンの番組を見ると、敢えて喧嘩を売っている感じもします。私が言っている「演奏ロマン主義」の時... -
レクチャーコンサートの感想と思うこと1
レクチャーコンサートの感想を、生徒だけでなく、たくさんの方(合わせて現時点で30人ほど)からいただきました。どうもありがとうございました。その感想と、私が思っていることを少し書いてみたいと思います。 コンサートそのものを「楽しめた」という方が多かったことはとても嬉しく思っています。特に、音律の異なったピアノの違い、和音による響きの違い、モーツァルトの曲による違いを感じていただけた方が多かったことは、今回のレクチャーコンサートの目的をある程度達せられたと思っています。その点につ... -
第1回レクチャーコンサートを終えて
昨日は、自分にとって大きな分岐点になる企画である、レクチャーコンサートを行ないました。ほぼ満席になる状態でした。ご来場くださった皆様に、厚く御礼を申し上げます。 今回の企画の主要な点は、二台のピアノを聞き比べていただいて違いを知っていただくこと、そこからモーツァルトのイメージを少し拡げていただきたいこと、さらに、5曲のソナタを聴いていただいて、モーツァルトがどのように変わっていったのかを感じていただくことが主眼でした。その行きつく先は、古典調律の時代の作曲家であるモーツァル... -
筋トレの怖さ
5月5日に発表会があり、生徒の半分弱が出演します。そろそろ、みなさん、本番に向けてラストスパート。そんな中で、ちょっと面白い(本人は深刻なのですが・・)ことがありました。皆さんにも気をつけてほしいことなので、(本人の了解を取った上で)暴露しちゃいます。 この生徒さん、発表会でかっこ良く弾くために、約一ヶ月前から筋トレを始めました。ダイエット効果も期待できますから、ステージ映えもするはず。もちろん、ボウイングの邪魔になる大胸筋を鍛えるトレーニングは「パス」です。十分に注意して... -
春爛漫コンサートと演奏家としての自分
昨日、茨城県守谷市の茶房「かやの木」で行なわれた、春爛漫コンサートに出演しました。友人のピアノの先生、KEIさんが、地元の声楽家やピアノの先生とともに行なっているコンサートで、今年で3回目になります。私自身は、去年に続いて二度目の出演。演奏したものは、サラサーテ「マラゲーニャ」マスネ「タイスの瞑想曲」サン・サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」、それに、クライスラーの「愛の喜び」「愛の悲しみ」「美しきロスマリン」の6曲。 プログラムはピアニストが選んだのですが、実は、今回の... -
先生は誰のための存在か
いじめの問題が世の中を騒がせている。先生が主導していじめを加えて生徒を自殺に追い込んでしまった中学校の事件の論評を見ていると、「言語道断」「こんなひどい先生は少数派」「他の多くの先生は一生懸命にやっている」という「評論家」「コメンテーター」の話をよく聞く。果たして、本当だろうか。イジメは、生徒が死なないと発覚しないことがほとんどである。しかし、いじめられた側、特に、力を持った権力者にいじめられたものは、ほとんどの場合、忍従を強いられるのである。表面化しないだけであって、実... -
「3Dと2D さらに音感との関係」に対して掲示板でのやりとり抜粋
空間認知能力について問題を抱えている生徒さんの話の続編として「3Dと2D さらに音感との関係」話を書きました。それを受けて掲示板に書き込みがあり、関連した話として、そのやりとりもあげておきます。(掲示板形式で少し読みづらいとは思いますがご容赦下さい。 ) ========================================== Harryさん お返事が遅くなりました。とても大きなテーマで、なかなか書くべき内容がまとまらなかったことと、体調を崩したりしていたことなどもあり、時間がかかってしまいました。申し訳ありませ... -
導入用の楽器とすてきな弓の話
今年になってから、ヴァイオリンを初めて持つ方が3人、新しい生徒さんになりました。アシスタントの先生との分担が定着したので、ほとんどお断りしていた新しい生徒さんを何人か増やすことができたことが理由です。そうした生徒さんたちにお勧めしている楽器が、サラサーテにも書いた、16万ほどの中国製のヴァイオリンです。 中国製のヴァイオリンが出始めたときに、興味を持ってかなりたくさん弾いてみました。もう15年くらい前になるのではないかと思います。セットで2万、なんていうとんでもないものもあり、... -
3Dと2D さらに音感との関係
以前、空間認知能力について問題を抱えている生徒の話を書きました。その続編です。 この生徒さんは、さまざまな問題を抱えているのですが、音程を相対的に捉えることができないことも、大きな問題でした。いろいろと音感を試した結果、擬似的に絶対音感(のようなもの)を認知していて、それを利用して音程を取っていました。もちろん、正確な音程がとれるはずはなく、どのように相対的な音感を身につけたらよいのか、試行錯誤を繰り返しているところです。ところが、最近のレッスンで、興味深いことがわかってき... -
オーケストラの練習中エピソード
ロオケは普通、年間100回以上の演奏会をします。ですが、アマチュアオケの活動の中心は練習にあります。(いや、練習後にあるのだ、という人もいるかもしれませんね(^ ^))ですから、練習中にもいろいろなハプニングが起こります。そんな話を集めてみました。 [目次] 1.練習中のイタズラ 2.ぼく、うまいんです君 1.練習中のイタズラ 1)指揮者には絶対音感があるか 練習中に、いろいろなイタズラをするのは、アマチュアオケの特権でしょうか。とにかく、いろんなことがありました。特に、学生時代は... -
レコード嫌い
これまた過激な題名です(^ ^;; その昔(1994年ごろ)、ある音楽仲間とやりあった時に書いたものにちょっと手を加えました。 ◎ 私はレコードを聴かない 私は、ほとんどレコード(今やCDですが)を聴きません。もちろん、何十枚かのCDと恐らく400枚近いレコード、数百本のカセットテープ(もうだめになっているでしょうね)を「所有」していますが。中高生のころ、私は熱心なリスナーでもありました。毎日、FMファンをチェックして、エアチェックをし、レコード芸術を読んではレコードをあさっていまし... -
音楽評論家について
これまた過激な題名ですが・・・これも、以前(1992年)書いたものです。内容に異論のある方も多いでしょうが(^ ^;; また、最近では評論家の質も変わってきているようですね。 ◎ 音楽評論家の害毒 私は、音楽評論家と言われる人たちが嫌いです。中には、少々評価している人もいるにはいるのですが。評論家を嫌いになったのには、多くの理由があります。 理由 その1)権威のような振りをして、純真な音楽愛好家を弄んでいる 私は、高校生の頃、熱心なリスナーでした。毎日のようにエアチェック(こんな言葉、知... -
アマオケの演奏会の料金
1987年に書いたものです。 ずいぶん前のものですが、アマオケにおけるチケット料の現状はほとんど変わっていません。ちょっと過激な内容と感じる人もいるかも知れませんね。^^;) ============================ この頃、 とあるアマチュアオケのトレーナーをしていました。トレーナーといっても、別 にトレーナー代をもらっていたわけではないのですが・・・ そのオケは、はっきりいって箸にも棒にもかからない、という感じのオケでした。私がトレーナーになる3年前に演奏会をちらっとみたのですが、ビオラ... -
音楽は料理だ!
これは、あっちこっちで書いたり言ったりしてきたことです。私の人生で大切なこと、「音楽」と「料理」。言い換えると、「演奏すること・聴くこと」と「料理すること・食べること」ですね。 昔から、音楽家には美食家が多いといわれてきました。美食で寿命を縮めたと思われる演奏家もたくさんいますし、私の身の回りのプロの演奏家も、食べることが趣味、という人がとてもたくさんいます。 私流に言えば、「人生のもっとも楽しいことの一つである音楽を職業にしてしまった人は、もう一つの楽しいことである、食べ... -
音楽教育の最初に見せるべきもの
これも以前から書こうと思っていたことである。 「最初に何を見せるべきか・・日本の音楽教育の致命的勘違い」 オーケストラプレーヤーの間に、「音教オケ」という言葉があった。(今もあるかどうかは知らない)意味するところは、「子ども向けの音楽教室を専門にやるオーケストラ」ということである。ほとんどの場合「一発もの」で、継続的にやられているものでも、「メンツはその時によって違う」ことがほとんどだ。プロモーター(オケの中では人集めをする人を「インスペクター」と呼ぶところが多いよう... -
インテンポとメトロノーム
テンポを安定させるために、メトロノームで練習することは役に立つか、というのがもともとの命題です。メトロノームで練習することの意味や、インテンポって何だ?ということを何回か書いたのですが、それをリメイクしました。 インテンポとメトロノーム メトロノームを使って練習をするか、というと、私はめったにやりません。なぜなら、メトロノームを使って練習しても、テンポが直ちに安定するようにはならないと思っていることが一つ、「音楽的なインテンポ」を殺してしまうような気がするのが一つ、です。 「... -
音楽教師の資質1…生徒と先生の相性 〜発表会を見て先生を判断する法
音楽を教える、楽器を教える、ということがどういうことなのか。とても大きな問題です。最近、ある先生にとても腹がたったので、以前から思っていることを書いてみる気になりました。 その先生は、芸大出身のヴァイオリンの先生です。生徒さんもたくさんいて、大にぎわい。縁あって、その先生のお弟子さんの一人を、何回かレッスンすることになりました。この生徒さんは、まじめに練習をするのですが、どうも「音楽する」ということに楽しみが感じられません。本当に楽しんでいないのか、楽しみを表に出さないのか... -
音程の良いピアノ
音程の良いピアノ、といっても、調律の話ではありません。私たちは、ピアノもヴァイオリンも一応弾くのですが、ピアノの音程がとっても気になってきました。 ご存じのように、ピアノは平均律に調律されます。ですから、例えば長三和音なんかを無神経にたたくと、とっても汚い音がします。また、スケールだって、あんまり気持ちが良くない。ピアノだけを弾いているとあまり認識しないことが多いのですが、弦楽器と一緒に演奏すると、てきめん、音程の悪さが気になります。 このことは、長い間、私にとっては「解決... -
音楽の価値?
また、大上段に振りかぶったようなタイトルですが・・・中身はあまり大したことありません(^ ^;; 以前(1993年)、あるアマチュアオケで書いた雑文です。 ◎ 音楽の意味と価値 私たちは、なぜ音楽をするのでしょう。せっかくの休みに、わざわざ遠くから(の人もいますよね)集まってオケをやる。そのために、家庭内不和を起こしている人もいるかもしれませんし、 仕事に支障を来している人もいるかもしれません。それでいて、できあがった結果は、人様に胸を張ってお聴かせできるような代物か、というと、は... -
音楽教師の資質2…ヴァイオリンのボウイングを例に
音楽の技術を教える、という作業が個人対個人のものである、また、マニュアルが存在しない、ということを、ヴァイオリンのボウイングを例にとって説明します。 ヴァイオリンという楽器は、肉体的にいろいろな無理を要求します。左手は「ねじった」ような形を強いられますし、右手は「ひねった」形を要求される場合があります。子どもの頃からヴァイオリンを弾いていると、体の形がかなり変形します。昔私が腱鞘炎をやってしまったときに、整体の先生にかかったら、何にも説明していないのに、「あなた、ヴァイオリ... -
音楽教師の資質3…何を育てるのか/模倣と独創
「天才」という言葉を聞いてどう思いますか。才能を持って生まれ、小さい頃から周りが驚く能力を発揮し大芸術家になっていく・・・そんな人を想像するでしょうか。音楽史上、モーツァルトなどの作曲家、多くの演奏家(現代ならみどりちゃんとか、龍君とか、ヴェンゲーロフとか)がそう評されてきました。では、「才能」は単なる遺伝子的な問題なのでしょうか。(その人の才能を見抜く、という点については次項) こんな仮定をしても仕方ないのですが、例えばみどりちゃんが音楽に全く縁のない家庭にうまれたとしま... -
音楽教師の資質4…子どもの能力を見抜くこと
子どもの能力はとても測りにくいものです。それは、言葉の通じない外国へ行って医者にかかるのに似ています。 急な腹痛を起こして、言葉の通じないところで病院に行ったとします。顔からは脂汗を流している。おなかを抱えて体をくのじに折り曲げている。どうやら、おなかが痛いということは通 じそうです。場所も・・・なんとかなるかもしれません。「どういう風にいたい?」これはちょっと難しいですね。「薬のアレルギーありますか」ああ、もうお手上げです。 子どもがどんな能力を持っているかということを見抜... -
音楽教師の資質番外編…頭の悪い音楽教師
最近、大人になってヴァイオリンを始める人が増えている。その増え方も半端じゃないようだ。ネットでHPを探すと、レイトスターターのホームページがいくらでも見つかる。そんなページの一つの特徴は、BBSを設置しているところが多いこと。仲間が集う場として機能しているのだろう。それはそれでよいのだが・・・ 幾つかのサイトを見て回って、あまりにレヴェルの低い「議論」がなされているのを知った。この「レヴェルの低い」ということには、二通りの意味がある。「議論になっていない」という「論理的な」... -
〈序〉アンサンブルweb講座にようこそ
ウェブ上でできること、というのは限られています。でも、実際に知っておいた方がよいことはたくさんあります。このページは、基本的に私がトレーナーをしている「ストリングアズール」のメンバーや、これからアンサンブルに参加するであろう人たちを念頭に置いて書き進めていきます。 学生時代からいろいろなオケやアンサンブルに参加してみて、とても不満に思っていたことがあります。一つは音程。もう一つは、一緒に弾くために何をしたらよいのか、ということがどうもピントがずれているような気がしたことです... -
番外編「その場飛びの悲劇 〜○○ブリ退治の法則〜」
楽器を始めたばかりの人には、すぐには関係ありませんが、思い立ったことは書いておかないとわすれちゃうので、書いちゃいます。 アマチュアのオケでモーツァルトを聴くと、とても気になることがよくあります。それは、「スピッカート」いわゆる「飛ばし弓」です。これは、歯切れよい音を出すのにとても便利なツールなので、指導者も、しばしば「ここは飛ばして」と要求することがあります。飛ばし弓の技術や、どんなときに本当に「飛ばす」のか、ということは別 項に譲りますが、ここでは、多くのアマチュアが陥... -
lesson 2-2「トレーナーとは?」
最近、オーケストラのトレーナーが何をする人か、ということがあるところで話題になりました。トレーナーとは一体何をする人なのか、少し考えさせられました。僕自身、アマチュアオーケストラの弦トレーナーをやっていたこともありますし、今はストリング・アズールの「トレーナー」を名乗っていますが、オケでトレーナーとしてやっていたことと今とではコンセプトが違います。今回は、「どんなトレーナーがよいのだろうか」ということを考えてみます。 僕が「トレーナー」という存在を認識したのは、大学オケでの... -
lesson 2-1「ザッツ、アインザッツ」
前々から書こうと思っていたことですが、アマチュアのトップ奏者の中に「勘違い」をしている人が多いことが気になっていました。何かというと、「トップとはザッツを出して演奏をリードするものである」と思い込んでいる人が多いことです。 アマオケを聴きに行くと、それこそ自分のパートが出るたびに大きく振り付けをして指示するトップに出会うことがあります。これ、ほとんど意味がないんですね。 先日、知人があるオーケストラに参加したときのこと。コンサートマスターは、現職のプロオケのコンサートマスタ... -
lesson 1-9「テンポの取り方…大きな誤解を解く」
アンサンブルをしていると、「走るな!」とか「伸びてる!」と怒られることがありませんか?そういったとき、どうやって解決しようとしているでしょうか?多くの指導者は、「ちゃんと細かく数えて!」と指示するようです。場合によっては、手を実際の音符より細かく叩いて、テンポを一定にする練習をします。果 たしてこれは良い方法でしょうか? 「どんかま」という言葉をご存知ですか?スタジオで録音をするとき、テンポを一定に保つために、メトロノームのように音を出したり、一定の間隔で点滅(交互に点灯)... -
lesson 1-8「オーケストラと指揮者の関係」
以前のドレ会のときにも、「指揮者とオケの関係」についてたくさんの質問を受けました。このような簡単な「紙上レッスン」で語れるようなものではないのですが、基本的なことを述べておきます。 まず、指揮者がオーケストラをどう考えているか、ということを知ってください。 指揮者がオーケストラを振るとき、おおざっぱに言って二通りの考え方があるようです。一つは、指揮者は音楽を創る「独裁者」である、というもの。極論を言えば、楽曲全体のことは指揮者だけが認識していればよい、そしてその音楽を実現す... -
〈序〉レイトスターターのためのWebバイオリン講座について
[こちらにある文章群は、2003年から05年にかけて書かれたものです。内容的に問題があるものは概ね書き直してありますが、内容的にはやや古く、付け加えるべきことも多いことをご了解ください。] 大人になってからヴァイオリンを始める人が増えています。レイトスターターのためのオフ会やアンサンブルもあちこちで開かれているようです。私が10年前にドレ会のトレーナーを始めた頃は、そんな集まりもどこにもなかったと思います。インターネットの普及で、志を同じくする人たちが集うことがとても楽になり... -
はじめに・・・練習法の考え方
ヴァイオリンが上達するためには、効率の良い、正しい練習が必要です。今回は、さまざまなトレーニングを必要とするヴァイオリンの技術を習得したり音楽的な演奏をしたりするためには、どのような練習をするべきなのか、ということを考えてみましょう。「こうすればできるようになる」ということではなく、「できるようになるためにはどのように考えるべきか」ということを理解してもらうのがこの講座の目的です。この点を最初に確認して読み進めてください。 -
lesson 1-4「旋律と和声の音程の基礎知識」
旋律と和声の音程では音程が違う、という話を聞いたことがある人も多いでしょう。今回は、それを理屈で理解するための基礎知識です。人間の耳は、単純な周波数比の音をきれいであると認識する、ということを、Lesson2「純正調と平均律の基礎知識」で述べました。今回は、このことを利用して、和音と旋律の音程の秘密を探ってみます。 ◎ 和音の秘密 ◎ 音を発する物体は、その音だけでなく、その音の倍音列の音も発しています。倍音、というのは、読んで時のごとく、整数倍した音、という意味です。簡単のために、... -
〈序〉Web講座「音程と音律入門」について
このコンテンツは、生徒向け「理論講座」で「音程講座」用に作った資料です。ヴァイオリンの音程の仕組みや音律についての基礎的な理解を求めるための内容になっています。実際にはこの資料を用いて講習会を行なったので、説明が抜けていたり飛ばしてあったりするところがありますが、音律を簡単に理解するためには役に立つと思い、ウェブにあげることにしました。 最後の「音程に関する資料」の中には、特に初学者が陥りやすい「音程のミス」がまとめてあります。練習の指針になると思いますので、ご活用ください。 -
lesson 1-1「チューニング」
◎ チューニングの大切さ ◎ アズールのいわば「前身」である「ドレ会」では、チューニングが名物でした。練習が始まって、時には一時間近くをかけて、全員のチューニングをします。なぜこんなことをするのか、と、結構批判もありました。みんな「弾きたくて」参加しているのに、チューニングを延々やられたんではたまらい、という批判です。その気持ちもわからないではないのですが、「耳を鍛える」ためには、どうしても「正しい音」「正しい響き」を理解することが必要です。そのためには、開放弦が合っていない... -
1.日々の練習の意味…レッスンとの関係
レッスンと日々の練習とは、進度により、また習得すべき内容によって、関係性が異なります。このことを理解しているかどうかで、練習の効率と獲得できるモノがかなり違ってくるのです。レッスンと日々の練習との関係は、概ね以下のように分類できます。 1)レッスンで新しい技術を習得し、それを日々の練習で定着させること レッスンの場で「できた」新しいことを、練習で再現し、いつでも使える自分のアイテムとして格納する作業がこれにあたります。ヴァイオリンを始めたばかり、ないし、先生を替わった直後な... -
〈1〉音程を考えるための基礎知識など
(1)音程を考える順序 実際の音程理論に入る前に、ヴァイオリンの音程を論じるときに必要なことを、まず流れとして把握していただきたい。音程を考える考え方そのものを理解していない方があまりに多いからである。簡単にまとめると、ヴァイオリンの音程を考えるまでの道筋は以下のようになる。 1)音程を決めるのは、振動数である。音律の根本は、音の間隔を周波数比で表すことで理解できる。 2)どのような音を人間は心地よいと感じるか → 心地よい音程は、同時に複数の音が鳴る時と、音が時間経過とともに... -
〈 講座01 〉はじめに…何故ヴァイオリン?何をやりたいの?
本論の前に、これから楽器を始めようと思っている方へ、一つ二つ書いてみたいと思います。 あなたは、何故楽器を始めたくなったのでしょうか?そしてたくさんある楽器の中から、なぜヴァイオリンを選ぼうと思ったのでしょうか? ヴァイオリンという楽器は、かなり「とっつきにくい」部類にはいると思います。ピアノのように叩いて音が出るわけではないし、ギターのように音程を作るフレットがあるわけでもありません。それなのに、何故「苦労してまで」ヴァイオリンを習いたいと思われたのでしょうか? もちろん、...
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